【BL】お荷物くんの奮闘記
「そうしたら、元々の気性が荒くてつい最近まで虐げられてきた魔の方が一方的に戦いを仕掛けてくるね。そうでなくとも、それを危惧した臆病な人間が打って出るだろう。どのみち全面戦争の始まりだ」


 表情ひとつ変えずに自分と同じ人間を殺し、理想のための計画を遂行しようとする冷血な神。


 ほんとは泣き虫で、すぐ転ぶしすぐ拗ねる。引きこもりだし、人付き合いだってあんまり得意じゃなくて、そんで、笑うのがへたくそ。


「そっかあ。じゃあやっぱ、全部混ぜちまうのがいいのかな」


「……その前に君を解放する方法も、ちゃんと探すよ」


「そんなのいらねえって言ってるだろ。まだ言うか。今のおれの一番はカイン、おまえだ。もしあっちに行くんなら、おまえも一緒だぜ」


 おれの代わりに世界を支配する、新たな魔王。


 全部おれのためで、全部おれの一番好きなカインだ。


「ありがとう。……ごめんね、レツ」


 自分を打ち倒す勇者が現れるその時まで、いつか終わりが来るその日まで、彼には誰も手出しさせない。


「そういやさ、今のプロフェット、また棄てんの?」


「そうだね、人形として運用できなくなったら、処分するつもりだけど」


「おまえから作ったんだろ。こないだ見に行ったけど、あいつ雰囲気カインそっくりだったもん」


「だって君みたいなタイプか、ぼくみたいなタイプしか作れないし……君みたいなの作ったら、ぼく棄てられなくなっちゃうし」


「もったいねえなあ、モデルおまえならおれ気に入るに決まってんのに」


 もうずっと遠い昔のことだ。


 彼が自分の一番になったのは。


 ……おれが、選んだんだ。それでいい。


 この思いが仕組まれた運命だったのだとしても、それすらずっと、ずっと昔の話。



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