【BL】お荷物くんの奮闘記
 踵を返して、階段へ走る。彼はもう止めなかった。


 諦めて手放すことの方が多いけど。いっこだけ譲れないものがあるんだ。あいつの隣はオレだ。……あいつを、一人にはしない。



 外に出てすぐ、塔の入り口付近に居たヴェルターと合流した。


「ヴェルター! これ、どういう状況だ? リュータは!?」


「貴様は何をやっている!」


 彼に駆け寄ろうとすると、ヴェルターが手に持った槍を投げつけてきた。危うくそれを一歩下がって避ける。次の瞬間、自分が立っていた場所に火球が落下した。


「い、今のは……」


「貴様の仲間は上だ! 巻き添えを食らいたくなければ来い!」


 槍を拾ったヴェルターが片手にこちらの手を掴んで、駆け出した。


「……なん、だ、あれ」


 走りながら、言われるまま上空を見上げる。展望室では分からなかった高度の空中で、二つの影が攻防を繰り広げていた。


「オレにも分からん。突然上空に現れた仮面の男が、この街のギルドを光の雨で破壊した。人間で戦える者は残っていまい」
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