君ノいない世界 【完】
「忘れろとは言わない、そんなの流石に酷だ。」

「忘れられるわけないよ」

僕は力なく返す。

「でも、まだ十六だ。いやでもこれから恋はする」

分かってるよ。
十六歳。
まだ。
十六なんだ。

「分かってるけど、ハクは、大切だから。」

「知ってる。でもハクちゃんもそれを望んでない。」

「僕は不器用だから。」

「答えになってないぞ」

バシッと背中を叩かれて、どこまでが冗談だったのか王子様スマイルを浮かべていた。
それに救われるわけでもなく、虚しく笑った。
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