職場恋愛
山野さんの「一緒に住んじゃえよ、楽だぞ〜」という言葉に私たちは照れて「初々しいね〜」とニヤニヤされたんだけど、一緒に住めるものならぜひ住みたい。



ブー…ブー…ブー…



「誰か電話鳴ってる」


山野さんに言われて確認すると私の携帯だった。


画面を確認して気分が急降下した。


『お母さん』


「出なよ」


山野さんに促されて嫌々出た。


「もしも…」


『あんた今日も帰ってこないつもり?』


はぁ。

だから嫌なんだよ。
お母さんからの電話は。


「別に関係ないじゃん」


『何日もお世話になって迷惑だとか思わないわけ?』


迷惑という言葉にドキッとしてチラッと隣の航を見たら、口パクで『お母さん?』と聞かれたから頷いた。


「高校生じゃないんだから黙ってて」


『人としてなんとも思わないの?』


「うるさいなぁ」


『いいからあんた今日は帰ってきなさい。出て行くなら荷造りしてからにして』


ブチッと切られて気分が悪い。


「ごめんなさい、お母さんがうるさいので終電があるうちに帰りますね」


そう言って財布を取り出した私の手を航がそっと押さえた。


「送る」


航は自分の財布からスッと1万円札を出して山野さんに渡した。


「後輩から1万はもらえないなぁ〜。次はこうちゃんのおごりで」


でも山野さんは受け取らずにそれを返した。


「すみません。ごちそうさまです」


「おう。気を付けろよ〜」


「ごちそうさまです」


りんちゃんさん…は寝てるけど山野さんに挨拶して2人でお店を出た。

こうやってせっかくの飲み会を途中退席してご馳走してもらうことも相当相手に悪いけどね。


「私そんなに酔ってないから1人で帰れるよ」


「だめ。送る」


「大丈夫。早く帰って寝たいでしょ?」


「寝たくないから送る」


なんで今日はこんなに強引なんだろう。
本当に帰れるのに。


「じゃあ…中間地点までお願いします」


ちょっと不満そうな顔をしたけど、納得してくれた。
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