職場恋愛
しばらく抱きしめられて私の荒ぶった心が落ち着いてきた。

冷静になってから思い返すととんでもない八つ当たりをしてしまったと思う。


優しさで叱ってくれたのに指図しないでなんて。

最悪だ。



「結、しつこいくらい言うけど、大好きだよ」


抱きしめられてるから航の声が耳元で響いてドキドキする。


「……ごめ、なさい」


「うん?」


「指図しないでとか、偉そうとか、思ってない」


「うん」


「信じてもらえないかもしれないけど、私も大好きです。大好きなのに…」


「うん。ありがとう。もう謝らないで。結は悪くないよ」


「本当にごめんなさい」


さっきは怖かったけど、航はやっぱりすごく優しい。
押し倒して動けないようにしたのは私に世の中の怖さを教えるため。

愛情そのものだった。


私はいつもどんな時でも不器用で下手くそ。
こうやって迷惑かけることしかできない。



「どうして…」


「ん?」


「どうして私なんですか」


私よりも可愛くていい子はたくさんいるのに。


「無理しちゃうとことか溜め込んじゃうの見てたら守りたいって思ったし、素直だけど本音が見えない子だなって印象があって、探りたい、俺にだけ見せてほしいって思ったんだよ〜。あと、何かあるとすぐ真っ赤になって分かりやすいのが世界一可愛い」



こんなストレートに好きなところを言ってくれる彼氏が他にいるだろうか。

そっと体が離されて目が合った。


「ふふ顔赤い。
…泣いていいんだよ。無理しないで」


いつも以上に優しく微笑まれて我慢していた涙が、私の意思とは関係なく流れた。







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