職場恋愛
「ねえ」



車はいつの間にか高速道路を走っていて、さっきまでいじり倒されていたつり目さんも、私の横で静かに笑っていた航も、気付いたら眠っていた。

そこで声をあげたのはりんちゃんさんだった。

「高速乗ったら飛ばすって言ったよね?」


いつもより何トーンも低い声でお隣の彼氏さんを問い詰めるりんちゃんさんはきっと怖い顔をしているに違いない。


「いつも飛ばさないって自己完結してたろ」


「完結じゃないのよ、あれには続きがあったの。今日からこっちの世界に来なさいって。私の心の声、聞こえなかったの?」


「心の声どころかリアルの声も聞こえにくいわ。なんて?」


深夜4時過ぎ、なんとなく2人のテンションが狂い始めていると感じた。

深夜のテンションってやつ。


「あんた!耳をかじられたくなかったら今すぐ飛ばしなさい!遅すぎる!こんな運転だからみんな寝ちゃったじゃない!」


私は起きてますよ…。


「みんな疲れてんだよ、お前はなんで疲れてねーんだ?さてはサボってたな?」


「あたしは要領がいいのよ。何?ビビってんの?スピード出すのが怖いの?」


「俺は人に流されるタイプじゃねーの。アンポンタンはさっさと寝ろよ」


「トイレ行きたいんだけど!サービスエリアまだ?」


「地図見とけバカ」


「バカ?顔面にぶっかけるわよ!」


完全に深夜のテンションだ、これは。
私が起きてることにも気付いてないっぽいし、よくそんな大胆発言ができるなぁ。



「汚ねぇなあ。お前本当に女かよ」


「そんな女が可愛くてしょーがないのはどこのどいつだよ!」


「そんな男いんのかよ。趣味悪」


自分のことを趣味悪いとか言っちゃって。
なんだかんだやっぱりラブラブだな。
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