俺様Dr.に愛されすぎて
手料理……とはいえ、作りにいるわけにもいかないし、豪勢なものを作れるわけでもないし。
それなら。
その日、仕事を終えた私はスーパーに立ち寄りカゴへあれこれと詰め込んでいった。
気づけば両手の袋いっぱいになっていた食材は、翌朝早くに起きた私の手によって様々なメニューへと変身していく。
ふわふわの甘い玉子焼き、アスパラガスの肉巻きとからあげ、小さめの野菜グラタンなど……
それらを新品の青いお弁当箱へ詰め込み、ごはんは彩りのいい枝豆のまぜごはん。
そう、真木先生の『手料理』から私が思いついたのは、手作りのお弁当だった。
お弁当のおかずくらいなら私でも作れるし、渡しても重くない……はず。
「で、できた……!」
たまに作る自分用のお弁当なら冷凍食品を使いながらの簡単なもので済ませてしまう。
けれど、今回はそれでは意味がないから。
時間をかけて作っただけに、出来上がったお弁当に感動もひとしおだ。
あとはこれを今日の外回りの際に、真木先生のもとへ届けるだけ。
……喜んで、くれるかな。
食べてくれたら、少しでも力になれたら、いいな。
真木先生への思いで、胸が膨らむ。
「あ!時間!」
そうするうちに気づけば時刻はいつも家を出る時間に近づいていることに気づき、私は慌てて身支度をした。
別に、私と彼は恋人とかそういう関係じゃない。
友人と呼ぶような仲でもない。
中途半端で曖昧な関係だ。
だけど、そんな中でも彼の笑顔を思い浮かべると嬉しくなって、そのためになにかをしたいと願う心がある。