俺様Dr.に愛されすぎて
「これ」
「え?なに?」
真木先生は意味がわからなそうにそれを受け取ると、バッグの中を見る。
そこに入っていたお弁当箱から、それが手作りのお弁当だと気付いたようで、その顔は目を丸くして驚く。
「……手料理食べたら元気でるって、言ってたから」
柄じゃない行いに、照れから可愛げのない言い方になってしまう。
そんな私に真木先生は「ふっ」と笑った。
「なんだ……冗談のつもりだったのに」
「え!?」
もしかしてまたからかわれた!?
ていうか、冗談を本気にする痛い女だと思われた!?
衝撃を受けながら彼を見る。ところが、その言葉を口にする真木先生は、頬を少し赤らめ、緩んだ口元に右手をあてている。
それは、私が想像していたものとは違う反応だった。
「真木先生……もしかして、喜んでます?」
自惚れと言われるかも、と普段なら聞けないようなことを、思わず聞いてしまった。
それに対して真木先生は、小さく頷く。
「喜ばない、わけがないだろ」
にやけが止まらない、とでもいうかのようにその大きな手で口元を覆い隠す。
こんなに素直に喜んでくれるとは思わなくて、私もつられてにやけてしまいそうだ。
「今時間あるか?」
「え?はい、少し早めに出てきたので……」
「そうか。俺今休憩だからちょうどよかった。来い」
真木先生は、そう言って私の腕を引いて歩き出す。
来いって……どこに?
戸惑いながら連れてこられたのは、以前も来たことのある先生たちの医局。
真木先生は誰もいないのを確認すると自然と中へ私を案内するけれど、考えてみれば、医師でも看護師でもない私がここへ立ち入って大丈夫なのだろうか。
そんな不安をよそに、真木先生は部屋の鍵をカチャンとしめた。