俺様Dr.に愛されすぎて
「弁当、今食べていい?」
もちろん、と頷くと、彼とともに小さなソファへ腰をおろす。
真木先生は目の前のテーブルにミニトートを置くと、お弁当箱を取り出し広げた。
彩り、大丈夫だったかな。
嫌いなものとかアレルギーとかなかったかな。
味つけは私の好みでよかったかな。
朝はあんなに誇らしい気持ちで見れたのに、こうして彼の目の前に置くと一気に自信がなくなってしまう。
ヒヤヒヤとした気持ちで見守っていると、真木先生は一緒に入れたお箸を手に、玉子焼きをひとつ、口へ含んだ。
「ど……どうですか?」
「ん、甘い」
恐る恐る問いかければ、彼は口元を緩めて頷く。
その反応に、不味くはなさそう、と少し安堵した。
「藤谷、意外と料理できるんだな」
「意外ってどういう意味ですか……って、あ。もしかして昨日の発言、『料理苦手そう』っていうのは冗談じゃなかったんですね?」
じろ、とその顔を睨めば、真木先生は続いて口へ運んだ唐揚げで、頬を膨らませながら笑う。
否定も肯定もしないその横顔から、そうだったんだなと察した。
「その意外な料理の味はどうですか」
「美味いよ。どれ食っても超美味い」
チクリと嫌味のような言い方をしてみるけれど、そんな私に対しても彼は笑顔で答えてみせた。
「どれ食ってもって……大袈裟ですよ」
「大袈裟じゃないって。好きな人が自分のために作ってくれた料理は、お世辞抜きに超美味い」
喜んでくれるかな、とは思ったけれど、そこまではっきりと褒められると恥ずかしい。
『好きな人が自分のために』、なんて……よくまぁ、そんな恥ずかしいセリフが言えるものだ。
けど、そこまで喜んでくれるなら、作ってよかった。
彼の笑顔に、こちらまで嬉しくなってしまう。