俺様Dr.に愛されすぎて



それから、なにかと藤谷を気にとめるようになった。

怪我はもう大丈夫だろうか。今日はなにか無理をしていないだろうか、と。

そのうち段々と目で追うようになり、気づけば彼女が営業に来る日はそわそわとして落ち着かなくなっていた。



顔を合わせ話せば、嬉しかった。

ちょっかいを出す俺に、拗ねて怒って笑う。そんな藤谷がかわいかった。



救えない命や、治せない病。

それらの現実に気持ちが沈む日もあったけれど、そんな時だってなにも知らずに笑いかけてくれる藤谷が、眩しくて愛しく思えたんだ。



そして、俺はようやく気付く。

この気持ちが恋であること。

藤谷が、好きだということに。



自覚しても、告白だのなんだのと進める勇気はなかった。

断られて気まずくなるかも。取引先だからと気遣われるかも。

そうなるくらいなら、このままの形でいることもある意味幸せなのかもしれない。なんて、臆病ばかりが心を占める。



そんなある日のことだった。



『よく来てるあの営業の子、かわいいよな。ほら、新和メディカルの』

『今度飯誘ってみる?いつもニコニコしてるし、断らなそうじゃね?』



通りがかった休憩室から聞こえてきた、他の医師たちの会話。

その話から、初めて感じたのは焦りと嫉妬。



そう、か。

彼女に惹かれるのは、自分だけじゃない。知らないところで言い寄る奴もいるだろう。



……そんなのは、いやだ。

譲りたくない。取られたくない。

このままでも、なんて悠長なことを言ってる場合じゃない。



そう決意した俺の背中を押すような、突然の雨。

同じ傘の下を歩く彼女の笑顔がやっぱりかわいくて、抑えきれずにキスをした。




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