俺様Dr.に愛されすぎて
拒まれるかもしれない。引かれて、嫌われるかもしれない。
けれど、その瞬間、驚くその目にしっかりと俺の姿が映り込んだ。
あぁ、ようやくここからだ。
彼女の瞳に、そう覚悟が決まった。
けれど待っていた結末は、残酷な現実だった。
『彼のこと、また信じてみたいと思います』
もしかしたら、なんて微かに期待をしていた自分が痛い。
……けど、やっぱり元カレがいいってことだよな。
本当は、『俺を選べよ』って言いたかった。
引き留めて、強く抱きしめてしまいたかった。
けれど、この心だけが求めても意味がない。その心も求めてくれなくては意味がないから、答えを託したのに。
あれから一週間が経った今も、気持ちは晴れない。
昼食を終えたあとも、ひとり病院の屋上で柵に寄りかかり景色を見ながら、あの日の彼女の言葉を思い出してへこんでいる。
「あーずさ」
すると、名前を呼ぶ声とともに背中にずしっと寄りかかる重みを感じた。
俺のことを『梓』と呼ぶのは、ここではひとりしかいない。
「……菜々」
その名前を呼ぶと、予想通り菜々が笑って俺の顔を覗き込んだ。
「まだヘコんでるの?もう忘れて次の恋に進もうよ」
「……なんの話だよ」
「片想いしてたあの子にフラれたんでしょ?院内中の噂だよ」
……最悪だ。
最近やけに看護師たちがこちらを見てひそひそしていると思ったら、そんな話が回っていたとは。
それが元カノの耳に入ったということもまた、最悪だ。
「はぁ……」と深いため息をつくと、そんな俺を見て菜々はなぜか嬉しそうに笑う。