俺様Dr.に愛されすぎて




それから、私は20日のデートだけを楽しみに毎日仕事を頑張った。



なにを着ていこうか、新しい服を買おうか、天気はどうだろう、いろんなことを考えるだけで胸がドキドキと高鳴った。

会えない間の寂しさも、彼の想いを感じ取るだけで紛れてしまう。



そして迎えた21日の日曜日。

待ち合わせをした池袋駅の駅前には、日曜日ということもあり沢山の人が行き交っている。

そんな人の流れを見ながら、私は改札近くの壁際に立ち、ひとり真木先生を待っていた。



新品の、ビジューが輝くブラウスとテラコッタ色のフレアスカート、丁寧に巻いた髪、時間をかけたメイク。

昨夜はネイルケアにパックも念入りにして、準備万端だ。



早くこないかな……。

わくわく、そわそわとする気持ちをおさえながら、『沙織』と呼ぶ真木先生が現れるのを待つ。





……ところが。待てども彼が来る気配はない。

左手首の腕時計を見れば、時刻はすでに待ち合わせから1時間は経とうとしている。



遅いなぁ……事故?寝坊?忙しい中だし、疲れて寝てるのかも。

嬉しくて浮かれてたけど、こういう時だからこそゆっくり休ませてあげるべきだったかもしれない。



そんなことを考えていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。

きたっ……!

嬉しさを隠すことなく笑顔で振り返る。が、そこにいたのは私服姿の永野くんだった。



「あ……藤谷、さん。お疲れ様、です」



きっと、私を見かけてなんの気なしに声をかけたはいいけれど、予想以上の笑顔で振り返られたことに驚いたのだろう。

少し引き気味に挨拶をする彼に、一方の私からは嬉しさがサーっと引く。


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