俺様Dr.に愛されすぎて
「なんだ……永野くんか」
「なんかすみません……けど、そんな露骨にがっかりしなくても」
一瞬で真顔になる私を見て、永野くんは悲しげにしゅんとした。
「どうしたの?こんなところで」
「友達と約束してたんですけど、相手が来れなくなっちゃって。なので買い物でもして帰ろうかなって思ってたら、藤谷さんを見かけて」
説明をする彼は、水色と紺の切替シャツがいつもより少し幼く見せてよく似合っている。
「藤谷さんはどうしたんですか?あ、そういえばデートって今日でしたっけ。もしかして今日もドタキャンですか!?」
「って違う!少し彼が遅れてるだけで……」
そう言いかけたとき、ヴー、とバッグの中のスマートフォンが鳴る。
取り出して見れば【着信 真木梓】と表示された画面に、真木先生だ!とすぐ電話に出た。
「もしもし!真木先生どうしたんですか?もうだいぶ時間過ぎてて……」
勢いよく話し出す私に、電話の向こうの彼は『あー……』と言いづらそうな声を出す。
『本当に悪い、今日行けそうにない』
「え……?」
行けそうに、ない?
その言葉に、一瞬声が出なくなる。
『今日だけは絶対に出られないって、休み取ってたんだけど、今朝から担当患者の容態が悪化して……落ち着くまでは離れられなくて』
患者さんの容態が……。そっか、それじゃあ仕方ないよね。
『だから』と言葉を続けようとする彼に、私は息をひとつ吸って声を発した。