俺様Dr.に愛されすぎて
なんで、そんな普通の顔で……あれ、もしかして、キスなんてなかったことにされた?
それとも、キスなんてなんてことないことだった?
大したことないことで、挨拶みたいなもの?
その真意はわからない。
けれどただひとつ確かなことは、あのキスを意識しているのは私だけだということ。
本気じゃないだろうなんて、わかってた。わかってたけどさ……そんな軽い気持ちで唇を奪われるなんて、文句言わないと気が済まない!!
「真木先生!ちょっと来てください!」
「へ?なんだよいきなり」
「いいから!!」
キッと目をつり上げて、私はその腕を引っ張り歩く。
訳も分からずついてくる真木先生を連れ、人気のない細い通路へ入っていった。
「こんなひと気のない通路に連れ込むなんて……藤谷って意外と積極的?」
「って、違います!変な勘違いやめてください!」
ふざけたことを言う彼に、ついすかさずツッコミを入れた。
ふざける余裕があるなんて……やっぱり本気なんかじゃなかったんだ!
ムカムカと余計に腹が立ってきた。