俺様Dr.に愛されすぎて
彼が笑いかけるのも、優しく接するのも、私だけじゃない。他の人にだって同じだ。
わかっているのに、苦しい。
やっぱり、『好き』とか『本気』とか、嘘なんじゃないだろうかと思えてくる。
……まぁ、そんなのわかってたことだし。
付き合ってるわけでもないんだから、それならそれで相手にしないで終わるだけ。
だから別に、真木先生が女の子と仲良くしていようが、関係ない。
そう心の中で強がるように言って、ふと思う。
……そっか、それは真木先生にとっても同じだ。
私が合コンに参加しようが、彼氏を見つけようが、関係ない。
ただ、からかう相手がひとり減るだけ。それだけのこと。
ひとり考えて、いっそう胸がチクリと痛んだ。
「藤谷さん、飲み物おかわりいる?」
「へ?あ……」
不意に声をかけられ、我にかえる。
声のする方向である右となりを見れば、そこに座る黒髪が爽やかな彼は、薬剤師の男の子だ。確か年齢は、私のふたつ下。
彼は、気を紛らわせるように飲むうちにすっかり空になっていた、私のグラスを見逃さなかったのだろう。
「じゃあ、同じの」と答えると、笑顔でウェイターを呼んで注文を通した。