俺様Dr.に愛されすぎて



それから、3時間ほどが経った頃。



「じゃあ、私たちタクシーで帰りますね~」

「うん。じゃあまた」



そう言って、深田さんは外科医の彼とふたり夜の街へと消えて行った。



それぞれに連絡先を交換したり、いいムードになったりと終始にぎやかに過ぎた合コン。

途中で薬剤師の彼は他の女の子に言い寄って……出会いの気配もなかった私は、みんなと話す合間にごはんを食べてお酒も飲んでいただけだけれど。



ちら、と見れば、私の前ではずっと真木先生の隣を独占していた女の子が彼にしっかりと腕を絡めている。



「ねぇ真木先生?このあとふたりで飲み直しにいきません?」



最後のひと押しと言わんばかりに積極さを見せる彼女に、真木先生は「どうするかなー」と笑う。



……勝手に、すれば。

どうでもいいし、関係ないし!



「じゃ、私帰るので!おつかれさまでした!」

「うん、藤谷さんお疲れ様。今日はありがとね」



それだけを言うと、真木先生の顔を見ることもなく、私はスタスタとその場を歩き出した。



よかったですね、合コン来た甲斐あって!

あれは私のこととか関係ない。なんだかんだ言って本当は出会いがほしかっただけでしょ!



チクチクとした胸の痛みとイライラとした苛立ち、それらを感じながら早足で駅を目指して歩いていく。



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