俺様Dr.に愛されすぎて
「だから、からかうのはやめてくださいってば」
「からかってない、本気だ」
向き合うように、真木先生は私の頬に手を添え、私の顔を背けさせない。
「なんでお前は、そんな頑なに認めないんだよ」
『なんで』、それは脳裏にチラつく過去のせい。
『沙織、好きだよ』
あの人が見せた笑顔と、切り捨てた言葉が、どうしても消せないから。
「……そんな言葉、信じられるわけ、ない」
視線を落としてつぶやくと、頬に触れていた手からは力が抜けた。
それに違和感を覚え、つい視線を戻すと、目の前の彼は悲しげに目を細める真木先生の顔があった。
「あ……真木、せん」
「わかったよ」
『真木先生』、と呼ぼうとしたその名前を遮るように、彼はそう言い放つ。
「……なに言っても、聞く耳すら持ってもらえないんだもんな」
諦めたような言葉とともに、真木先生は体を起こし、ベッドから降りた。
「真木先生、待って……」
「悪い、しつこかったよな。少し冷静になる」
そしてベッドの周りの服と荷物を拾うと、そのままアパートを出て行った。