俺様Dr.に愛されすぎて
そしてやってきた病院で、私はこそこそと柱の影に身を隠しながら院内を歩いていた。
今日は用があるのは外科だし、真木先生に会わないうちに仕事を済ませてしまおう。
顔を合わせたところで、なんて言えばいいかもわからないし……。
けど真木先生もたまに外科のフロア歩いていたりするし、気をつけないと。
そう辺りを見回し、急ぎ足で廊下を行く。
すると、目の前の曲がり角から出てきた人と思い切りぶつかってしまった。
「ぎゃっ!」
「うおっ」
ドンッという音とともに、相手の胸元に顔をぶつけてしまう。
ぶつけた鼻に痛みを感じながら顔を上げると、そこにいたのは真木先生だった。
「あ……真木、先生」
「藤谷……」
会えない、会いたくない、そう思っている時ほど会ってしまう。気まずさから目をそらした。
「お、お疲れさまです……」
「……あぁ、お疲れ」
取引先としてとりあえず挨拶をした私に、真木先生はそうそっけなく言うと、それ以上の言葉もなく歩き出してしまう。
「あっ、真木先生~!どうしたんですか~?」
「ちょっと用があって。阿部先生いるか?」
「いますよー、っていうか真木先生、今日一緒にお昼どうですか~?」
歩き出してすぐ、女性看護師に声をかけられ、真木先生は笑って答える。