俺様Dr.に愛されすぎて
『ちょっと元気になったからって無理するなよ。病み上がり』
「……わかってます」
気遣うというよりは釘をさすように言うと、彼は『ふっ』と笑う。
すみませんね、少し元気になったらすぐ調子に乗るやつで。
自分の行動を見透かされているようで、不満げに口を尖らせると、「じゃあ」と話を終えてスマートフォンを耳から離そうとした。
すると、スピーカーからは『あ、あと』ともうひと言を付けたす彼の声。
「なんですか?」
さらになにか用件があるのだろうかと再度スマートフォンを耳に当てる。
『好きだよ、藤谷』
「なっ!?」
そう囁いて、彼は電話を切ってしまった。
す、好きだよって……なにを、いきなり。
驚きと照れで更に顔を赤くして、スマートフォンを耳から離した。
私がこういう反応をすることを見透かしていて、言ったのだろう。
『好きだよ』の声が耳から離れなくて、くやしい。
通話を終えた画面には、『真木梓』の名前と『通話時間5分』の文字。
たった5分の電話で、デートの約束を取り付けてしまった。
デート、ってことはふたりでどこかに出かけるってことだよね?
そんな、ふたりで、デートなんて……。想像しただけで、ドキドキしてきた。
なに、着ようかな。
浮かれてしまう気持ちを必死に抑えながら、ポケットにスマートフォンをしまった。