俺様Dr.に愛されすぎて
「藤谷」
「あっ、えと……すみません、遅くなりました」
おずおずとした言い方で挨拶をして、彼に近付けずにいる私に、真木先生はいたって普通に近付き不思議そうにたずねた。
「どうした?」
「いえ、女の子に声かけられてたので、お邪魔かと」
って、なんだか嫌味っぽい言い方になってしまったかな。
大丈夫かな、と自分の発言に不安を感じてしまう。
けれどそんなところもまた、彼にはお見通しなのだろう。真木先生は笑って私の頭をぽんと撫でる。
「連絡先聞かれたから断ってただけ。つーか男にも言えることだけど、見ず知らずの人間に連絡先教えるわけないだろうになぁ」
呆れたように笑って言うのは、『だからなにもないよ』ということなのだろう。
断っていたんだ……よかった。
って、なんで?安心する意味がわからない。
安堵して、そんな自分に疑問を感じて、と忙しい私に、真木先生は視線をとめ、上から下までをまじまじと見た。
「私服だとやっぱり雰囲気違うな」
「へ、変ですか?」
「いや、かわいいよ」
小さく笑って言われた『かわいい』に、頬がポッと赤くなるのを感じた。
またそういうことを平気な顔で言ってのける……!
真木先生はその反応を見て笑うと、「行こうか」と歩き出す。
それについていくようにして、私も歩き出した。
日曜の新宿は、どこもかしこも人でいっぱいだ。
すれ違う人の波をうまくかわしながら進んでいく。