俺様Dr.に愛されすぎて
「デートって、どこ行くんですか?」
「いろいろ考えたんだけど、俺藤谷の好みとかよく知らないから。今日はゆっくり映画にしようかと思って」
「いいか?」と問いかける彼に、小さく頷く。
今日は、なんて言い方をされたら、次回がまたあるんだと期待してしまう。
いちいち些細なひと言で私を喜ばせるのが上手い人だ。
ふたり並んで歩き、やってきたのは駅からほど近い大きめの映画館だった。
白を基調とした高級感のあるその映画館は、赤い絨毯が敷かれたロビーにたくさんの人が集まっていた。
「さすが日曜、結構混んでますね」
「そうだな。なに見る?」
上映作品一覧が載った看板を見ながら、私に任せる、というようにたずねる真木先生に「えーと……」と悩んでしまう。
ベタな恋愛映画はちょっと恥ずかしいし、洋画のアクション系は苦手。初めてのデートにホラー、はないし……どうしよう。
いや、ひとつ見たいものがあるといえばあるんだけど。
チラ、と見た先にあるのは『吉原奇譚』と書かれたポスター。タイトル通り、吉原をテーマにした歴史物の映画だ。
元々歴史物が好きで、これも観たいと思ってたんだよね。
けど真木先生はそういうの興味ないだろうしなぁ。しかもこれもデートで観るような内容ではない気が……。
「決まったか?」
「え!?あー、えっと……」
「その反応は、見たいものはあるけど俺の好みが気になるってところだな」
うっ……。すごい、見透かされている。
『そうだろ?』と言いたげにニヤリと笑う真木先生に図星を指され、私はおずおずと先ほど見ていたポスターを指差した。