俺様Dr.に愛されすぎて



「デートって、どこ行くんですか?」

「いろいろ考えたんだけど、俺藤谷の好みとかよく知らないから。今日はゆっくり映画にしようかと思って」



「いいか?」と問いかける彼に、小さく頷く。



今日は、なんて言い方をされたら、次回がまたあるんだと期待してしまう。

いちいち些細なひと言で私を喜ばせるのが上手い人だ。



ふたり並んで歩き、やってきたのは駅からほど近い大きめの映画館だった。

白を基調とした高級感のあるその映画館は、赤い絨毯が敷かれたロビーにたくさんの人が集まっていた。



「さすが日曜、結構混んでますね」

「そうだな。なに見る?」



上映作品一覧が載った看板を見ながら、私に任せる、というようにたずねる真木先生に「えーと……」と悩んでしまう。



ベタな恋愛映画はちょっと恥ずかしいし、洋画のアクション系は苦手。初めてのデートにホラー、はないし……どうしよう。

いや、ひとつ見たいものがあるといえばあるんだけど。



チラ、と見た先にあるのは『吉原奇譚』と書かれたポスター。タイトル通り、吉原をテーマにした歴史物の映画だ。

元々歴史物が好きで、これも観たいと思ってたんだよね。

けど真木先生はそういうの興味ないだろうしなぁ。しかもこれもデートで観るような内容ではない気が……。



「決まったか?」

「え!?あー、えっと……」

「その反応は、見たいものはあるけど俺の好みが気になるってところだな」



うっ……。すごい、見透かされている。

『そうだろ?』と言いたげにニヤリと笑う真木先生に図星を指され、私はおずおずと先ほど見ていたポスターを指差した。




< 96 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop