俺様Dr.に愛されすぎて



「『吉原奇譚』……藤谷意外とこういうの好きなんだな」



それを見て、彼は少し意外そうな顔をして頷く。



「意外ってなんですか。歴史物とか時代劇とか、そういうの好きなんです」

「奇遇だな。俺も歴史物好き。最近は時間がなくてあんまりだけど、時代小説とかも前は結構読んでたよ」

「えっ!?そうなんですか!?」



思わぬ共通点に、自分の顔がぱぁっと明るくなるのがわかった。



「一番好きなのはやっぱり江戸時代を舞台にしたやつだな」

「ですよね!独特の文化も江戸の景色もいいですし!」



はしゃいで話す私に、真木先生はふっと笑うと頭をぽんぽんと撫でた。



「じゃあ、決まりだな。チケット買ってくるから待ってろ」



そして、そう言ってカウンターへと向かって行く。



……なにもかも、お見通しだなぁ。

些細な遠慮すらも、させてくれないほど。



けど、ひとつの共通点が嬉しいな。

嬉しさににやけそうになる口元をぐっとこらえた。



「お待たせ。ちょうどいい時間のあったからもう少ししたら入れるってさ」



戻ってきた真木先生は、そう言ってチケットを一枚手渡す。



「あっ、チケット代……」



支払わせてしまった、と慌ててバッグから財布を取り出そうとすると、彼はそんな私の手を止めた。



< 97 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop