俺様Dr.に愛されすぎて
「『吉原奇譚』……藤谷意外とこういうの好きなんだな」
それを見て、彼は少し意外そうな顔をして頷く。
「意外ってなんですか。歴史物とか時代劇とか、そういうの好きなんです」
「奇遇だな。俺も歴史物好き。最近は時間がなくてあんまりだけど、時代小説とかも前は結構読んでたよ」
「えっ!?そうなんですか!?」
思わぬ共通点に、自分の顔がぱぁっと明るくなるのがわかった。
「一番好きなのはやっぱり江戸時代を舞台にしたやつだな」
「ですよね!独特の文化も江戸の景色もいいですし!」
はしゃいで話す私に、真木先生はふっと笑うと頭をぽんぽんと撫でた。
「じゃあ、決まりだな。チケット買ってくるから待ってろ」
そして、そう言ってカウンターへと向かって行く。
……なにもかも、お見通しだなぁ。
些細な遠慮すらも、させてくれないほど。
けど、ひとつの共通点が嬉しいな。
嬉しさににやけそうになる口元をぐっとこらえた。
「お待たせ。ちょうどいい時間のあったからもう少ししたら入れるってさ」
戻ってきた真木先生は、そう言ってチケットを一枚手渡す。
「あっ、チケット代……」
支払わせてしまった、と慌ててバッグから財布を取り出そうとすると、彼はそんな私の手を止めた。