あなたのことは絶対に好きになれない!

「送ってくれてありがとう」

オウスケくんの家の前まで到着すると、私は康太くんにお礼を言った。

何てことないように「どういたしまして」と軽く返してくれる彼は、本当に良い人なのだと思う。


「じゃあ、またね」

そう言ってからに背を向けようとしたその時。


「久美香ちゃん」

彼に名前を呼ばれて、私は足を止めて振り返る。


「何?」

「彼氏のこと、本当に好きなの?」


……え?

思いもよらない質問に、私は言葉に詰まってしまう。



「す、好きだよ?」

正確には、〝好きかも〟だけれど……ここで細かいこと言っても仕方ない気がして、そう答えた。


すると。


「彼氏の方は? 本当に久美香ちゃんのことが好きなの?」


……え?




さっきから、康太くんが何を言っているのかよく分からない。

ちょっとムッとしながら無言で彼を見つめると、彼はハッとしたような表情で「ごめん!」と謝った。


「でもさ、さっき亜水も言ってたけど、久美香ちゃん、昔その人に凄い泣かされてたじゃん。俺も覚えてるよ。
好きだったからいじめてたって話だったけど、本当にそうなの? またいじめようとして近付いてるだけじゃない?」

「ちっ、違うよ!」

オウスケくんが意地悪だったのは事実だし、正直今も意地悪だけどーー彼は本当に私のことを好きでいてくれている。
もちろん、私自身も最初は彼の気持ちを疑っていたけれど、二十年近く前にプレゼントしたあの栞を今も使ってくれていることを知ったあの日から、彼の気持ちは確かに感じている。
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