あなたのことは絶対に好きになれない!
彼の唇が私に近付く。

私は思わず


「駄目っ!」

そう答えて、彼から身体を離した。



「……あ。ごめん……」

私が謝ると、彼は眉間に皺を寄せ、溜め息を吐きながらソファから立ち上がる。



「……ちょっと顔洗ってくる」

私から顔を背けたまま、彼はリビングから出ていく。


心臓が、不安と緊張で激しくドキドキと脈打つ。



…….何、今の?


確かに、今日はそういう流れになる約束をしていたけど……。


あんな、無理矢理みたいな……。



……もしかして、本当に私のことなんて何とも思ってない?


今まで向けてくれていたはずの気持ちは、全て嘘だった……?



そんなはずない、そんなはずないよ。


そう思いたいのに……。


私はソファから立ち上がり、気が付いたらバッグを持って玄関を飛び出していた。
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