あなたのことは絶対に好きになれない!
ぼんやりとしながら、帰る前に花壇の水やりをしていた。

考えれば考えるほど、嫌な思いが頭をよぎる。
でも、今の私にはオウスケくんを引き止める資格も魅力もない……。
彼が私ではなく朝比奈さんを選ぶなら、それは仕方のないことだと思う。

頭ではそう考えるのに、胸はギュッと締め付けられて苦しい。


するとその時。


「あれ、クミ」

後ろからオウスケくんの声がして、私はバッと勢いよく振り返る。


「何だよ、そのリアクション。ビックリさせたか?」

「う、ううん」

営業バッグを持って駐車場の方からやって来たところを見ると、外回りから戻ってきたんだと思う。


……声を掛けられて嬉しくない訳じゃない。
だけど、彼の顔を見たら少しイラッしたのも事実だった。
この後、朝比奈さんとご飯に行くこと知ってるんだからね、と言ってしまいたい……言ってしまおうか。私が行かないでとお願いすれば、もしかしたら行かないかもしれない……って、私はどれだけ自惚れてるの。彼はもう私のことなんて何とも思っていないからこそ、今夜朝比奈さんと会うのに。


「あ、タンポポ」

私の気持ちなんて知る由もなく、オウスケくんは花壇の隅っこに咲いているタンポポに目を向ける。


「他にもたくさん花はあるのに、タンポポが気になるの?」

「まあな」

「何で?」

「……別に?」


ん? 何だろう、今の妙な間は。私、何か変なこと言ったかな……?
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