あなたのことは絶対に好きになれない!
「……ねぇ。何で吉山さんに、今日はこれからデートだなんて言ったの?」

朝比奈さんとデートするんだって誤解してたよ、と私は伝えた。

まあ、誤解していたのは私も一緒なんだけど……。


「朝比奈さんだっけ? あの人が俺に会いに窓口に来たあの日から、吉山さんがやたら俺たちをくっつけようとしてきて鬱陶しかったんだよ。
今日はデート、って言えば、他に好きな女の子が出来たんだって思われるかなと思って」

「思わないよ。その流れじゃ、朝比奈さんとデートだって誰でも思うよ。
そんな風に遠回しに言うんじゃなくて、朝比奈さんに気がないから、吉山さんにハッキリそう言えば良かったのに」

もっともなことを言ったと思うのだけれど彼からは、

「あんまりハッキリ言うのは、俺の王子キャラじゃない」

と言ってきて。


「……いっそ、そのキャラやめたら?
私が言うのもあれだけど、王子様キャラになったのって、昔私に優しくしなかったことへの後悔の表れなんでしょ? でも実際、再会した今も私への態度は意地悪なままなんだし……」


そう考えると、普段から彼には無理している部分があるのではないかと思ってそう尋ねたのだけれど。


「いや、このキャラは結構得することも多いから。ちょっと大変な事務仕事をお願いしたい時も、皆〝早坂さんの頼みなら〟って聞いてくれるし」

「うわっ。本当にSなんだから!」

事務職の女性を何だと思っているんだ……そう思いつつも、彼らしいその言葉に、どこか笑ってしまう。

彼のSな性格に対してこんな風に感じるなんて。私、やっぱりどうかしてる?
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