キミと初恋。
「先輩、ボタンください!」

「えー私も欲しい! 袖でもいいのでください!」


卒業生が出てくるのを待ってた下級生が卒業生に群がった。その中でも一際人気なのは颯ちゃんだと思う。群れがすごくて見えないけど、きっとそうだ。


「かすみ、あんたは行かないんだ?」

「どこに?」

「決まってんじゃん。ボタン貰いに」


私は呆れた顔でりょうちんのにんまり顔を見つめた。

まーた出た。りょうちんの暇つぶし的ないじりだ。


「行かないよ。私はもう終わったから」

「終わったって?」


私はカバンを担ぎ直して、にんまり笑ってみせた。


「全部! もう悔いなし! じゃね」


廊下から見える体育館の入り口。そこから運動場にかけて生徒がごった返してる。

みんな記念撮影したり、好きな人や憧れの人のボタンを貰ったり。泣いたり、笑ったり。まだまだ寒いこの季節、だけどみんなの感情を見てて、とても熱いと思った。


颯ちゃんはきっとボタン全部持ってかれて、ジャケットまで剥がされてなければいいけど。そう想像してありえそうで笑えない。

私は校舎の渡り廊下を抜けて、3年校舎の裏までやってきた。校舎内の人気は少なく、3年生が教室で記念に写真撮影を始めていた。


私はそんな先輩方をよそ目に3年校舎裏にある花壇へとやって来た。


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