キミと初恋。
「あの……卒業、おめでとうございます」

「ああ」

「見事にボタン、無くなってますね」


颯ちゃんのブレザーに付いていたボタン2つ、腕のボタンも根こそぎだ。


「こえーよな。人の許可なくブチブチちぎって行きやがった。シャツのボタン引きちぎられそうになった時はさすがに引いたけどな」


なんとか死守した感じにシャツはよれよれだった。ズボンからシャツの裾が出てるし。


「あははっ、相変わらずですね。でも……」


あれから日替わり彼女の姿は見なくなりましたけど……なんて言いそうになって、私は思わず口を縛るようにして、閉じた。


「なんだよ?」

「いえ、先輩が前向きになってくれて良かったです」

「なんだそれ」


眉間にシワを寄せながら、颯ちゃんはほんのり濡れた髪を掻き上げた。


「ハンカチ、これ洗って返すわ」

「あはっ、なに言ってんですか。いいですよ、先輩今日で卒業ですし」

「なんだよ、別に返すくらい」

「いいんです」


私はかすみ草で顔を隠した。顔を隠すにはちょうどいい量だった。


「……なんで?」


なんでそんな事言うんですか。今さらなんでそんな事言うんですか。


「先輩が卒業したら会う機会なんてないじゃないですか」

「会えなくはないだろ」


そうじゃなくって……。


「私が、会いたくないって言ってるんです」


こんなつもりで言ったんじゃない。私は颯ちゃんと友達になりたいわけじゃない。

全てを終わらせるために、全てを言ったのであって……だからもう、いいんです。


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