キミと初恋。
……サイアク。


私は今、青々とした空を仰ぎながら最悪のシナリオを考えていた。

初デートで、颯ちゃんの前で吐いてしまった。颯ちゃんはパークの人に言って掃除するとか言って、私をこの木陰のベンチまで連れてきた後、あの場所へと戻ってしまった。

私はもうこのまま消え去りたい。

颯ちゃんにゲロ処理させるとか有り得ない。私がやるって言ったけど、それを颯ちゃんが受け入れてくれるはずもなく。

体も今では鉛のように重くて、まるで自分の体じゃないみたい。

きっと熱が上がってるせいだと思う。

吐いた分、気分はかなり楽になったけど、今度は違った意味で気が重い。


「やっぱり私じゃ、ヒロインにはなれないよね……」


……お姉ちゃん、どう思ったんだろう。


最後、笑ってた。
あの意味をいいように解釈してしまっていいのだろうか。


「……冷たっ!」


突然額にひんやりとしたものを感じて、私は思わず目を開けた。


「ほれ、これ飲んどけ」


そう言って差し出してくれたのはポカリスエット。

私はそれを受け取って、上体を起こした。


「吐いた後はちゃんと水分補給しないとな」


既にキャップを開けてくれてるそれを、私はコクリと飲んだ。

ああ、どうして弱ってる時はポカリがこんなに美味しく感じるんだろう。


「あの、すみませんでした」

「ああ」

「最悪ですよね……」


デートでこんな醜態。本当に最悪だと思う。


「ああ、最悪だな」


ですよね……。
それを否定しないところがまた颯ちゃんらしい。


「あの……ゲロ処理させて本当にすみませんでした」


頭を下げて謝った。けど、そのまま頭を上げる気にはなれなかった。

今は颯ちゃんの顔が怖くて見れない。


「パーク内掃除してる人に声かけたら掃除してくれるって言うから俺は何もしてねーよ」

「……そうなんですね。でもすみません」


この後颯ちゃんから言われるであろう別れの言葉を想像して、私は思わず泣きそうになった。

ギュッと目を瞑って涙を堪えていた、その時ーー。


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