キミと初恋。
「あのなぁ、さっきから何で俺が怒ってるか分かってんのか?」


しびれを切らしたように、颯ちゃんはそう言った。


「分かってます……」

「じゃあなんでか言ってみろよ」

「あんなところで醜態を晒してしまったから……」

「これだからかすみはバカだって言ってんだよ!」


颯ちゃんは私が握りしめてたポカリを奪って、私の肩をぐいっと掴んだ。

何が起きてるのか分からないまま、されるがままに私は颯ちゃんの膝の上に頭を乗せていた。


「俺が怒ってんのは、なんで体調悪いこと隠してたんだって事だろ。最初から知ってたら、日にちだって変えたし、別のとこ選んだっつーの!」

「ほら、やっぱり。言ったら会えなかったじゃないですか!」

「当たり前だろ! 現にお前吐いたくらい体調悪いじゃねーかよ」

「だって颯ちゃんバイトで忙しいでしょ? もう気づけば休みも折り返し地点なんですよ、知ってました? 私はもうこのまま会えないんじゃないかって思ってたんですから!」


吐いたせいでちょっと元気を取り戻しつつあるのか、はたまた熱で脳みそ溶けたのか。

なかなか理不尽な言い分とは思いつつ、さっきまで弱気だった気持ちが私の不満からくる怒りに負けた瞬間だった。

起き上がろうとした私を押さえつけるように、額にポカリを押し当てられた。


「……悪かった」


そんな言葉が私の鼓膜をか細く揺らし、私の怒りはそよ風と共に一瞬で奪い去られてしまった。



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