キミと初恋。
はめられた。完全に先輩にはめられた。初めからそのつもりだったんだ。

食堂で私を隣に座らせて、こういう風に話を持っていくつもりだったんだ。

隣に座らせておけば、それだけで他の女子からの風よけになる。そんな風に考えて提案したんだろうなって思ってたけど、想像以上だった。

先輩は、想像以上に酷いやつだった……。


「ごめんな、俺が一目惚れなんてしたばっかりに」


この茶番まだ続ける気か!


「先輩いい加減にーー」

「俺こんなんだから迷惑かけるかと思って、友達になってほしいとか言ったけど、本当は俺と付き合って欲しいんだ」


ーー阿鼻叫喚。とはこの事だ。

周りでわき起こる悲鳴と雄叫び。その中に混じって、この状況を楽しむ男子のはやし立てる声。


「先輩! 無理です」


もう無理だ。これ以上付き合いきれない。

そう思って立ち上がろうとしたその矢先ーー。


「仲良くやってな!」


そんな捨てゼリフとともに、ずっと静かに事を見ていた元カノは、私のコップを手に持ち、水を私に浴びせた。


えー! なんで私⁈


突然の事で言葉も出ない私は、ただ滴り落ちる冷たい水に唖然とした。


「おい、待てよ」


先輩が珍しく怒ってる。そんな言葉が聞こえるけど、むしろ私の頭は冷静だ。

多分きっと、冷たい水をかけられたせいじゃないかと思う。


「おいって!」


先輩は立ち上がって追いかけようとしたけど、元カノはそそくさと食堂を出て行った後だった。


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