キミと初恋。
「ほんと、悪かったって」


思ってもないくせに。

なんて私の心が尖りはじめていた時、先輩は私の前に立ちはだかり、深々と頭を下げた。


「ほんと、ごめん。もう少し俺に付き合ってほしい」

「無理ですよ……」

「こんな事頼めるのはお前しかいないんだって」

「いますよ絶対。もっとよく探してみてくださいよ」



私はこんな状況を望んでいたわけじゃない。

先輩が毎日のように日替わりで彼女を作るのをやめて欲しかっただけ。

先輩が本当に相手の事が好きだったというのなら、例え日替わりで彼女が変わっても仕方がない事なのかもしれない。

気が多いって理由で、本当に先輩が相手の事を好きなのだというのなら……だけど、先輩はそうじゃない。

失恋の痛手を他の何かで埋めようとしていただけ。それが日替わりの彼女達だったというだけ。


先輩はそうやって傷ついた穴を埋めようとしていただけ。

だけど、当たり前だけど、それじゃ傷なんて埋まるはずもないんだ。


それは先輩も気づいていたはずだ、彼女達ではその溝が埋まる訳がないって事に。


ただ、隣にいるはずの彼女の姿を探して、でもいなくて。隣にあった温もり、それが無くなった事によって何もないのが寂しくて、寒くて、だから代わりを置いていたに過ぎない。

あいにく、隣に置ける彼女達はいくらでも寄ってきた。たとえそれが先輩にとってまがい物だったとしても。


私は遠くから先輩を見ていて、ずっとそんな風に感じていた。

そしてそれは、決して大きく外れてなんていないんだと思う。

だからこそ、先輩の事を好きにならないだろうって思えた私を彼は選んだと思う。


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