キミと初恋。
「ところで先輩、どこ行くんですか?」

「んー、マックか吉牛か、なんかその辺」

「じゃあマック行きましょ。ポテトが食べたい気分です」


先輩は、ははっと笑い声をあげながら「勝手に決めんなよ」なんて言ってくる。

いやいや、奢ってもらうとは言っても選択権くらいあると思いますけど。なんて思いながらも、先輩の笑顔に心が温まっていくのを感じた。

だって、久しぶりにこういう笑い方をする先輩を見た気がしたから。

学校で見かける先輩はいつも無口で、つまんなさそうで、食堂で見かける時も、いつも隣には切れることなく彼女の存在がいるというのに、笑ってる姿は一度も見たことがない。


「じゃあ駅前のマックに行くか」


なんて言いながら、私達は学校の門を後にした。


「あっ、ずっと聞こうと思ってたんだけど」

「なんですか?」


学校を出て数分経ったくらいの時、思いついたかのように先輩は小さく手を叩いて私に向き直った。


「あのさ、お前の名前、なんていうんだ?」


今更ですか。


「先輩あのね、聞く順番間違えてませんか? それでよく私に彼女役だのなんだの依頼しましたよね」


なんなら先輩、今日なんて私に告白までしてましたよ。

名前すら知らない私に、一目惚れとか言いながら。


呆れて物も言えないとはこの事だ。失礼にも程がある。

それなのに私はとばっちりをくらい、水までかけられる羽目になったのだ。

これはとことん奢って貰わなきゃ割に合わない。


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