キミと初恋。
「雨、止まなかったか……」


止まなくて残念なのか、まだ降っている事にホッとしてるのか、自分でもよく分からない。

ちょうどその時、私のケータイが震えた。


“どーすんだ?”


たったの一文。先輩からだった。

一瞬ためらったけど、私も一文だけメッセージを送り返した。


“じゃあ、よろしくお願いします”


とりあえず校門の近くで雨宿りしながら待ってたらいいか、なんて思いながら荷物を持った瞬間、なにか違和感に気づいた。


カバンがやけに、重い……?


なんで? そんな疑問を思いながら私はカバンを開いた。するとーー。


「わっ!」


思わず声を上げ、固まってしまった。私の声を聞きつけて帰り支度しながらやってきたのはりょうちん。


「どーしたの、かす……げぇっ!」


私の視線を追ってカバンの中を覗き込んだりょうちんも、私と同じような反応を示した。


「なんじゃこりゃ、泥だらけじゃん!」


それも雨で濡れたびちょびちょのやつ。


「誰だよ、こんな陰湿なことした奴!」


りょうちんが叫んだおかげで、教室内の騒がしさから一転、しんと静まり返った。クラスメイト達は私達の様子がおかしい事に気付いて、わらわらと寄って来て、カバンの中を覗き込んで身を引いていく。


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