隣の席の三島くんには彼女がいたんだってさ。
––––コツン


右隣から飛んできたのは、丸まった紙切れ。


ゔっ!こ、これは……!


ゆっくりと振り向けば、三島くんと視線がぶつかる。


口パクで「あ・け・て」と言いながら、紙を指差している。


私は授業をしている先生をチラッと確認すると教科書を立て、その陰でそれを開いた。


そこに書かれていたのは––––



【昼休み、屋上に来て】






***


三島くんの髪は柔らかいのか、風が吹くとさらさらと優しく舞う。


不安気な私に振り向くと、彼は穏やかな顔で笑った。


「北川さん。昨日はごめんね。つい、むきになっちゃってさ」


「…私こそごめんね。三島くんと元カノさんのこと、何も知らないのに…あんなこと言って」


「ううん。北川さんの言う通りだよ」


「地味で大してかっこよくないってやつ?あれ、本当はそんな風に思ってないよ?」


「ふ。それもそうだけど、違うよ。昨日北川さんに言われてはっとしたんだ。俺、全く前に進もうとなんてしてなかったなって」


三島くんは、屋上の柵の前の段差に腰を掛ける。


「だから、北川さんに指摘されてちょっとキツかった」


「……うん」
< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop