恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「だ、大丈夫、でしょうか」
「気にしなくていい」
「で、でも、」
「話は後。それよりどうする?」
「え?」
「無理しなくていいから、先にタクシーでホテルに戻る?」
さっきまでの黒い表情が急に退いて、真剣な目で私を見ている。
そうだ、まだ、終わってない。
気付いて、私も背筋を伸ばした。
「大丈夫です、戻ります。一緒に」
「そう。あと三十分ほどだと思うから、頑張れ」
珍しくストレートに優しい言葉が、気遣ってくれてるのだと教えてくれる。
じんと胸が熱くなったその時に、ぽんっと頭に大きな手が置かれた。
「最後まで頑張ったらご褒美やるよ」
東屋さんは、いつか私の心臓を壊してしまうんじゃないかと思う。
田倉さんは、それきり店には戻ってこなかったからあの時止まっていたタクシーで帰ったんだろう。
宴会はそれから何事もなくお開きになったから、もしも田倉さんが何かアクションを起こすとしたら後日ということになる。