恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「私だってドライヤーくらい自分でできます」
「何拗ねてんの」
「……子供扱いに聞こえたもので」
やっぱりそうなのか。
魅力が足りないのかサイズが足りないのか。
ぽんっと頭に浮かんだのは池内さんの姿で、ぽよよんとした大きな胸に、トラウマになりそうだ。
せめて、しなだれかかるようなあんな仕草を真似すれば女っぽく見えるだろうか。
ドライヤーの風が止んで、髪を撫で付けるような感覚が後頭部に伝わった。
「こんなもん?」
「……ありがとうございます」
かつんと聞こえたのは、ドライヤーのコンセントが引っこ抜かれて床に落ちた音だ。
それからクルクルとコードを巻かれたドライヤーが、ぽんと脇に置かれた。
「…………子供扱いしてたらこんな痕つけないけどね」
「ひゃっ?」
突然、耳の少し下くらいの首筋を、軽く指で引っ掻かれた。
「近づき過ぎたら見えるくらいでちょうどいいのに、まさかあんな晒しながら出てくると思わなかった」
そこは、言わずもがな、キスマークのあるところ。
「あ! そうですよこんなとこに変なのつけないでください!」
手で抑えながら、顔だけ振り向いて東屋さんを睨んだ。
睨んだところで彼は楽しそうに笑うだけだ。
「あ、気付いてた?」
「教えてもらったんです柳原さんに!」
抗議しながら膝の上、身体ごともう少しだけ振り向こうとしたら、自然と足を促されていて。
「な、なんて言えばいいのか困って、移動中でもずっとからかわれて」
「あの人、こういう話好きだからね」
「あ、痕つけるのは」
「うん?」
気がついたら、向かい合わせに跨るような格好になっていて、その恥ずかしい状況に気づき膝の上から逃げ出したくなったけれど。
「……独占欲のあらわれだって、柳原さんが」
耐えた。
この程度で逃げてる場合ではないのだ。
ぎゅ、と唇を噛んで睨む私に、てっきり狼狽えるだろうとでも思っていたのか東屋さんの目が少し見開かれた。