恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
何か飲み物でも買うのかな、と思ったら、彼が立ち寄ったのは雑誌コーナーだった。
目的の雑誌を見つけたのか、一冊手にしてぱらぱらと捲る。
私も隣に並んで雑誌の棚を見渡して、好きな女優さんが表紙のものを見つけ手に取った。
今上映中の海外アニメ映画の声優を担当していて、その特集記事が載っている。
「それ観たいの?」
綺麗なワンシーンを切り取った画像に見いっていると、上からそんな声。
見上げると、東屋さんが私の手元を覗いていた。
「気になってるんです、この女優さんが好きで」
「俺、あれが観たい。サスペンスの……」
えーと、とか言いながら、彼は手にした雑誌を戻して映画雑誌をめくる。
そしてある邦画サスペンスの特集ページを拡げた。
「あ、確かに。これ邦画では一番気になってて」
「今上映中だっけ」
「そうですよ確か」
「観に行くか。今週末」
「え」
「どっち先に観る?」
え?
本当に、そんな風に誘ってもらえるなんて全く予測も期待もしていなくて、だからまさかのお言葉を理解するのに少々の時間といくつかの問答が必要だった。
「え、一緒に行く、ってことですか?」
「……そうだけど」
「で、同じのを一緒に?」
「……一緒に行っといて、各自好きなの勝手に観よう、なんて冷たいこと言うわけ?」
「いえ! いえそゆことじゃなくて本当に?って確かめたくて!」
私の反応がお気に召さなかったのか、徐々に深くなる眉間の皺に、どうにかストップをかけようとして。
「行きたくないなら別に、」
「行きます行きます! すごく嬉し、」
テンション高めで慌てて返事をして、むぐっと口を手で塞がれた。
「店ん中だし。うるさいよ」
と言いつつ、私の極端な反応が良かったのか東屋さんの口元がちょっと嬉しそうに綻んでいた。