恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
今日は私の見たかったアニメを観て、来週は東屋さん希望の邦画サスペンスの予定だ。
先にお昼ご飯を食べてから、予約してあった上映時間に映画館に向かう。
上映中の飲み物を買うため二人で売店の列に並んだ。
「あ、ポップコーン買います私」
「さっき飯食ったとこでもう入んの?」
「ポップコーンは別です! キャラメル味のヤツ」
「はいはい。飲み物と一緒に買うから。どれにする?」
「アイスティで……違いますよ私が買います。映画もお昼も奢ってもらったんだから。東屋さん飲み物どうしますか」
「並んでる間に決める。それより一花、お手洗いいの? この列並び終わったらすぐ時間になりそうだけど」
「あ……ほんとだ」
「行っといで、並んでるから」
ありがとうございます、とトイレに向かって走り出してから、はた、と気付く。
しまった、また話逸らされた。
今度こそ、お会計引き受けようと思ったのに。
これは、なんとしても早く戻って会計に間に合わせなければ。
幸いトイレはそれほど混んでもおらず、慌てて戻ろうとした時だ。
「紗世ちゃん?」
少し前にはよく聞き慣れていた声に呼ばれた。
「京介くん?」
驚いた顔でこちらに手を振る京介くんと、後ろには彼の友人が二人居る。
大学が同じだから勿論私も話したことがあるけれど、私自身はそれほど親しいわけでもなかった。
「偶然だね、紗世ちゃん何観に来てんの?」
「あ、海外アニメのやつ」
「ああ、主人公の声の女優さん好きだもんな」
にこやかにわだかまりなく話しかけてくれた彼に比べ、後ろの二人からの視線が痛い。
別れた経緯を知ってるんだろうな、とすぐに気づいた。