恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

今日は私の見たかったアニメを観て、来週は東屋さん希望の邦画サスペンスの予定だ。
先にお昼ご飯を食べてから、予約してあった上映時間に映画館に向かう。


上映中の飲み物を買うため二人で売店の列に並んだ。



「あ、ポップコーン買います私」

「さっき飯食ったとこでもう入んの?」

「ポップコーンは別です! キャラメル味のヤツ」

「はいはい。飲み物と一緒に買うから。どれにする?」

「アイスティで……違いますよ私が買います。映画もお昼も奢ってもらったんだから。東屋さん飲み物どうしますか」

「並んでる間に決める。それより一花、お手洗いいの? この列並び終わったらすぐ時間になりそうだけど」

「あ……ほんとだ」

「行っといで、並んでるから」


ありがとうございます、とトイレに向かって走り出してから、はた、と気付く。
しまった、また話逸らされた。


今度こそ、お会計引き受けようと思ったのに。


これは、なんとしても早く戻って会計に間に合わせなければ。
幸いトイレはそれほど混んでもおらず、慌てて戻ろうとした時だ。


「紗世ちゃん?」


少し前にはよく聞き慣れていた声に呼ばれた。


「京介くん?」


驚いた顔でこちらに手を振る京介くんと、後ろには彼の友人が二人居る。
大学が同じだから勿論私も話したことがあるけれど、私自身はそれほど親しいわけでもなかった。


「偶然だね、紗世ちゃん何観に来てんの?」

「あ、海外アニメのやつ」

「ああ、主人公の声の女優さん好きだもんな」


にこやかにわだかまりなく話しかけてくれた彼に比べ、後ろの二人からの視線が痛い。
別れた経緯を知ってるんだろうな、とすぐに気づいた。


< 205 / 310 >

この作品をシェア

pagetop