恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

エンドロールが流れ終わって、照明がゆっくり光度を増した。
周囲の観客たちの半数くらいは、エンドロールの途中で席を離れている。


「結構面白かったな」

「それは良かったです」


東屋さんはちゃっかり楽しんだらしい。私の方は結局見たような見てないような、集中しきれないままエンディングを迎えてしまった。


明るくなったら、どんな顔して東屋さんを見ればいいかなとかちょっとドキドキしてたのに、彼の方はなんてことはない。
しれっとドライに、全くいつも通りの顔だ。


なんだかすごく、してやられた気分。


「童話がモチーフの話ってさ、真実の愛とか永遠の愛の証明ってのが良く出て来るよな。面白い」

「面白い?」

「昔っから人間って変わんねーんだなと思って。疑うくせに憧れる、みたいな。だから童話になって残ってんだろ」

「ちょっ……そんな穿った観方しないで純粋に楽しんでくださいよ」

「楽しかったけど?」


楽しみ方がなんか違う!
なんか微妙に哲学っぽい!


でも確かにそうかもしれない。


「好き」って気持ちが、もっと目に見える形にできたらいいのに。
物語の中の枯れない薔薇みたいに。


私はこんなに好きなんですって、言葉だけでなくちゃんと伝わってますかって。
そしたら恋ってもっと簡単だ。



「物語みたいに現実でも気持ちが目に見えたらいいのに」



口に出してから、如何にも恋する乙女ちっくな発言だったかとちょっと恥ずかしくなった。
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