恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
どうせまた呆れた顔されるんだろうけど、実はその呆れ顔も結構好きだし、全然。
「はいはい」
「呆れてもへこたれませんからー」
「俺も好きだよ」
「えへへはい。えっ?!」
さらっと会話の中で流してしまいそうになった。
すっとんきょうな声が出て、思わずぎゅっと手を握って立ち止まる。
当然手を繋いだままの東屋さんも、つられて止まった。
「何、どうしたの」
「だって、今、なんて」
「……もう言わない」
「ええっ?! そんな!」
「暫くは」
「そんなあ!」
だっていくらなんでも、こんな街中の雑踏で!
大事な言葉、雑音なしでもっとちゃんと聞きたかった!
せめて前振りをくれたら心構え出来たのに!
いつか聞けたらいいな、って思ってたけど。
待って何にも、現実味がない。
「ほら行くよ。立ち止まったら迷惑」
手を引っ張られたけど、足が抵抗する。
お願い、この際この雑踏の中のままでいい。
後生ですからあと一回だけ聞きたい、今度は全身全集中して聞く。
黙ってじっと目で訴えると、東屋さんがぐっと眉根を寄せた。
うぅ、だめなのか。
と、諦めかけた時だった。
繋いだ手が、私の背中に回る。
後ろ手に拘束された形で腰を抱き寄せられ、驚いている間に耳元に彼が口を寄せた。
「心配しなくても、一晩かけてじっくり伝えてやるから」
「え、」
「今夜は寝るなよ絶対」