恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
あ。
そういえば、私結局、初めてだってこと言ってない。
ふと頭を掠めたけど、言う機会を見失った。
というのも、絶え間なく触れる東屋さんの唇も、掌もたまらなく気持ちよくて浸らされてしまって、それに。
触れ方が本当に愛しむように優しくて、不安を感じるよりも先に、安心してしまった。
余りの心地良さに、思わず手を伸ばした彼の肩が素肌であったことに驚いて、手を引込める。
彼もいつの間にか裸になってたことに気が付かないくらい、夢中にさせられてたことが恥ずかしかった。
「……何遠慮してんの」
「え?」
「……怖かったら、つかまってていいから」
ちゅ、と宥めるようなキスを一度。
私の下腹部に置かれた手は止まったままで、私が縋るのを待ってくれてるみたいだった。
おそるおそる、両手を伸ばして肩に触れた。
こんな、がっしりした人だったんだ、と思えば、これから自分が食べられるのだと余計な比喩表現が頭に浮かんで、余計に身体が熱くなる。
捕食される、側。
なのに、甘えて縋り付きたい気持ちが大きく膨らんで、私は彼の首筋に両腕で絡みついた。
「優しくするよ」と擦れた囁きにこくこくと頷いて、再開された愛撫にぎゅっと目を閉じる。
つい力が入って、縋りつく腕が強くなれば二人の顔もぐんと近いまま。
どれだけ堪えても漏れる声も、熱い吐息も。
私の口から零れる先から、あなたに全部食べられる。