恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】


改札を出たすぐの柱の影。
未だ涙の収まらぬ私を先に見つけたのは、待ち合わせしている友人のうちの二人だった。


「紗世!? あんた一体どうしたの!」

「彼氏と喧嘩でもした!?」


京介くんと別れて会社の先輩と付き合い始めたと、簡単にだけど説明してある。
大泣きしている私をどうにかしようとしてくれたのだけど、私はその場を動かなかった。


「ダメ。迎えに来てくれるからっ……」

「迎え? 彼氏?」

「ご、ゴメン、今日行けなくなった」


改札からもちゃんと見える、ここにいなくちゃ。


そこから動こうとしない私を友人ふたりが困り果てながらも見捨てずに居てくれて、それから約五分後だった。


上着を脱いで、乱暴に緩めたネクタイと襟元、少し乱れた髪。


いつも涼し気な彼とは思えない風体で現れ、周囲の目などお構いなしに私を抱きしめた。


随分走ったのだろうか、少し湿って汗の匂いのするワイシャツ。
顔を摺り寄せ深呼吸すれば、再びどっと涙が溢れて、一緒に堪えていた感情も全部解放されるみたいに、私は大きな声を上げて泣いた。


その泣き声すら閉じ込めるような力強さ。
ぎゅうっと頭を抱え込んでくれて、その窮屈さが嬉しくて。


「ごめんね。この子、今日は連れて帰るよ」


友人たちに向けられた言葉を、泣きすぎてぼうっとモヤのかかった頭で聞いていた。

< 285 / 310 >

この作品をシェア

pagetop