恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
若干ワザとらしさが入り混じる、いちゃつきモードのかずくんから顔を逸らして糸ちゃんに向き直る。
「謝るって……別に、いいですよ?」
「え?」
「もう、あんまり気にしてないです」
本当に、いっぱい泣いたけどその分いっぱい吐き出して、かずくんのことも聞いて、安心したら。
糸ちゃんに言われたこととか、少しも胸に引っかからなくなって、すっかり忘れてしまっていたくらいだ。
私があんまりカラッとした顔で言ったからか、糸ちゃんはかなり拍子抜けした様子で、それからしょぼんと眉尻を下げた。
「……わざと傷つけることばっか言ってごめん」
「だから良いですってば」
「うん、わかったけど言わせて、ごめん」
三メートル離れた柱の影から身体を出すと、糸ちゃんは深々と頭を下げた。
「じゃ、許してもらったってことでもう近づいても」
「10メートル内立ち入り禁止は続行だからな」
「増えてるよ!」
調子の良すぎるとこは、やっぱ糸ちゃんだ。