恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
10メートルも離れたら俺オフィスに入れないじゃん!
と嘆く糸ちゃんをそのままにして、ロビーを先に進む。
その間もかずくんの手は私の腰にあって、会場に着いてから絶えず身体のどこかに触れている印象だ。
「……わざとやってますよね?」
「うん」
にやにやと彼は楽しそうに笑う。
「糸井だけでもない。ついでにあちこち黙らせとこうと思って」
「それにしたってやりすぎですって……」
なんだかんだと、憶測でものを言う人たちのことを言ってるのだろう。
私はそんなの気にしてないし、それよりも人前でこうも密着されるのは、つらい。
ああ、ほら。
披露宴会場の受付に近づくほどに、見知った顔がちらちらとある。
気恥ずかしさを紛らわそうときょろきょろと視線を彷徨わせれば、女性が一塊に集まっているのを見つけてしまう。
営業補佐の女性陣であり、柳原さんとばっちり目が合ってしまった。
にやー、と嬉しそうに笑う。
彼女たちは嫌な噂などしたりしないけど、どちらかというと面白がる傾向にあるから。
きっと週明け、かずくんと糸ちゃんの喧嘩の件も含めて、色々とつっつかれるに違いない。