恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
結婚してるわけじゃなし。
恋に落ちる時って、そういうもん。
そんな風に割り切れたら、きっと誰も苦しまないし胸は痛まないのだけれど。


ちら、と目線を携帯の液晶画面に向けた時だ、偶然同じタイミングで着信が入った。
そこに表示された名前に、目を見張った。


「ひとちゃんて結構容赦ないよね、ダスター投げつけるとか」

「すみません糸ちゃん。私もう行きますね」

「えっ? なんでよ俺が食べ終わるまで、」

「失礼します。週末の合コン頑張ってくださいね!」


営業の男性社員が話してたのをちらっと小耳にはさみ、絶対糸ちゃん出席だろうなと思ってカマをかけたのだがどうやら当たりだ。


ぎょっとした表情で慌てる糸井さんに「彼女ゲットですよ!」と片手でガッツポーズをしてみせて急いで社員食堂を後にした。


社食をでてすぐ、歩きながら携帯を確認する。



『今日、そっち行くよ』



と、京介くんからのメッセージだった。
今送信されたばかりだ、今なら電話をかけたら出てくれるかもしれない。


そう思い落ち着いて話せるところを、と女子トイレに駆け込む。


あの歓迎会の日の、朝帰り以来だ。
京介くんと連絡が取れたのは。


あの朝、自分の駅に着いてすぐ、家まで歩きながら京介くんに電話した。
その時の、彼との会話が思い出される。


当然ながら、朝帰りの理由を問い詰められたのだ。
どこで夜を明かしたのかも。


『全然連絡取れなくてどんだけ心配したと思ってんの。今、どこ』

「……、帰る途中。ごめん、ほんとに……夕べ、家まで来てくれてたの?」

『終電まで待ってたのに。今まで何処に居たんだよ』


第一声こそ、私を心配していた声だったけれど。
まだ帰ってすらいないのだと知った後の京介君の声には、苛立ちが顕になっていた。


「酔っ払って、会社の人のとこに」

『それって男?』

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