社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「今朝、俺と美帆が別れたんじゃないかって噂を聞いたんだけどさ」
「私も、聞いたけど……」
小さくそう答えると、彼の指先が私の頬まで伸びてきた。
「あれ、どうしてくれるの? 美帆」
指先を私の頬に当てて、口角をくっと上げた彼は目が笑っていない。
「ま、待ってよ。あんな噂、何の根拠もないし、それに……私だけのせいで噂が流れたって言いたいわけ?」
「別に美帆だけのせいにしてるわけじゃないよ。でも、美帆が最近、清水とよく話したり一緒に帰ったりしてるのを見てる人が沢山いるんだってさ。それに、マルオに聞いたけど、先週末の飲み会で茅ヶ崎と良い感じだったらしいね。それもあの噂と一緒に流れてるけど、それでも自分は悪くないって言える?」
「……でも。それなら真樹だって、藤田さんと二人でご飯行ったじゃん」
私だけのせいにしないでよ、と付け足して唇を噛み締めた。
確かに、真樹の言う通りだし噂だってあながち間違いじゃない。だけど、私は異性と二人でご飯なんて行ってないし、あの噂が流れてしまった原因なんてお互い様じゃないか。
「藤田さんと二人では行ってない。確かにあの日、ちょっと意地張って『明日、二人で飲んでくるから』って言ったけど、マルオと藤田さんの三人でご飯に行ったよ」
「えっ」