二人だけの秘密
「未来、なんでお金なんか盗んだや?必要やったら、言ったらいいやろ」

「………」

父親にそう言われると、僕は口を噤む。

「はぁ。言えないなら、もう言わんでいいわ。でも、金で作った人間関係なんか、すぐ壊れんぞ」

「壊れるって………」

まくし立てるように言った父親の発言に、僕は眉をひそめた。

「未来も、言わんで分かるや。最近、ニュースになってるやろ。女子大生の事件や」

「………」

それを聞いて、僕は眉をピクリと動かした。

「そういう仕事をしてるから、事件に遭うねん。普通の女性がやるような仕事をしてないから、男子大学生に狙われるねん」

「それは、関係ないだろ」

初めて、父親に反抗した。今まで我慢してきた感情が、一気に爆発した。

「そもそも、普通の女性とそうじゃない女性の違いは一体なんだよ。はっきりとした定義もないのに、差別してんじゃねぇよ」

僕は、泣いていた。泣きながら叫び、二階の自分の寝室に駆け上がった。

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