幼なじみじゃ、なくなった夜。






ピンポーン




なんとか榎波の家に着いてインターフォンを鳴らした。


だけど、電気はついているのに誰も出てこない。




も、もしかして…。




あらぬ映像が頭の中に浮かんで、私はそれをかき消すように思わずボタンを連打する。




ピンポーンピンポピンポピンポ「っんだよ、うるせ…」




ガチャ、と苛立ったようにドアを開けた榎波の髪は濡れていた。どうやらシャワーを浴びていたらしい。




シャワーって。シャワーってことはもしかして、これから…!?




あらぬ脳内映像、パート2。(BGMはセクシーゾーン)




固まる私を前に、同じく固まっている榎波。




「か、夏帆!?お前何で…」


「いっ嫌なの!!」


「…は?」



唐突に叫んだ私に、榎波がポカンと口を開けた。




「い、嫌なの。後悔するのは嫌」


「お前急に何言って…」


「榎波の隣を、誰かにとられるのは嫌なの!!」








「…夏帆」


「お邪魔します!!」





ドン、と榎波を押し退け中に入る。




「ちょ、おいっ…!」



焦った榎波の声が背後で聞こえたけど、構わず私はズンズン廊下を歩いて、ドアを開けた。




「足立さんごめん!やっぱり私…!」





だけどそこには



誰の姿もなく。




ただ、おいしそうなカレーの匂いが漂っていた。






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