幼なじみじゃ、なくなった夜。
「そうだろ?」
黙り込む私を、榎波がやけに自信満々な瞳で覗き込む。
「さっき言ってたもんな。俺の隣を誰かにとられるのは嫌だって。俺の隣を誰かにとられるのは…」
「あーもううるさい!」
二回言うな!!
「夏帆が言ったんだろ」
榎波が立ち上がって、私の椅子の隣に立つ。
見下ろされて、私はなんだか居たたまれなくなって視線を机上に彷徨わせた。
「足立が俺の家にいると思って、こんな所まで来たんだろ?」
「………」
「なんとか言えよ」
「………」
まるで尋問のような榎波の問いに、私は黙秘権の行使で応戦。
「…はぁ~…」
私のだんまりに、榎波がため息をついてゴシゴシと頭を掻いた。
「もういいわ」
そしてクルリと向けられた大きな背に、私はようやく我に返った。
いや、黙秘権を行使している場合じゃない私!
だんまりする為にこんな所まで来たんじゃないし!!
「あのっ…!!」
ガタ、と立ち上がる。
「好きです!!!」